ランニングシューズ、性能一級、街履き兼用が今流

 この10年で約400万人も競技人口が増え、現在の総競技人口は約1000万人ともいわれるランニング。一過性のブームではなく、多くの人のライフスタイルに根付いた人気スポーツといえるだろう。愛好家の増加に伴い多様化するランニングシーンに対応すべく、スポーツメーカーも各種ランニングギアに力を入れている。とりわけ最近は、街でも履けるおしゃれなランニングシューズが目立ってきた。そこで今回は、ランニング性能に優れ、デザインも洒脱(しゃだつ)なラン&タウン兼用の両得ランニングシューズを紹介する。

■ランニングスペックならオフの外出も快適になる

 シューズ専門店やセレクトショップなどで販売されているカジュアルシューズは、デザイン性を重視したスニーカー。街で履く分には問題なく、革靴よりも歩きやすいが、ランニングに使えるかといえば話は別だ。商品によっては走れないこともないが、ラン専用に設計されたシューズとは性能に雲泥の差がある。より早く、より快適にランニングを楽しむなら、やはり最新テクノロジーを搭載したランニングシューズを履くべきだろう。
 しかしランニングシューズは専用設計ゆえに、街で履くには適していないデザインのものが多い。スポーツウエアには似合うが、オフのカジュアルウエアとはいまひとつ相性がよくない。
 「ランニング時にしか履かないから問題ない」と言う人もいるかと思うが、ランナーの中にはおしゃれさを求める人が多いのも事実。そして、ランニングできるほどハイスペックな靴を街で履ければ、オフの外出が快適になるに違いない。さらに、これからランニングを始めたいという人にとっては、万が一、三日坊主に終わってしまったときの保険にもなる。
 メリットだらけのおしゃれなランニングシューズだが、「走る」という目的がある以上、デザインの格好良さだけでなく、確かなテクノロジーを備えているかを見極めることが重要となる。そこで今回、スポーツシューズメーカーのプロダクト担当を経て、現在はランニングギア専門誌『Runners Pulse』の編集長を務める南井正弘氏に話を聞いた。南井氏お墨付きのランニングシューズ3足の細部を見ていくことで、ランニングシューズ選びの基準もわかるだろう。

■おしゃれランニングシューズの火付け役 アディダス「ウルトラブースト」

世代を問わず、多くのランナーに支持されているアディダス「ウルトラブースト」(2万1492円)。また20~30代を中心に、ランニングシーンだけでなく街でも履けるシューズとして注目を集めている
 多くのランナーが求めていたおしゃれなランニングシューズ。その潜在的な欲求を満たし、爆発的ヒットを記録したのがアディダス「ウルトラブースト」。2015年2月の発売以降、パフォーマンスの高さと履き心地の良さから、トップアスリートから市民ランナーまで幅広く支持されている。カニエ・ウェスト氏など著名アーティストがカジュアルシーンで着用した影響や、セレクトショップでの取り扱いがあったことから、オフでも履けるおしゃれなランニングシューズとして存在感を示している。
 もちろん、ランニング性能の高さは言うに及ばず。注目すべきはミッドソールに使用した“BOOST フォーム”。クッション性と反発力という相反する性能を兼備した独自のテクノロジーで、ランナーの歩調に適応し、ラクに長く走ることを可能にする。
 
「とにかくクッション性が抜群なので、足が痛いから今日は走るの止めようかな?という日にも、しっかりと足を保護してくれます。高い衝撃吸収性能と反発性能を兼ね備えているので、自然に足が前に出る感覚で本当に快適に走ることができるんです」(南井氏)

 

 BOOST フォームをはじめとする数々のテクノロジーを搭載するだけでなく、見た目にもこだわった結果、ランニングシーンのみならずカジュアルシーンとしても受け入れられるシューズとして好評を博している。
 
「ランニングが競技としてだけではなく、ライフスタイルとして根付いてきていることが一番の要因と考えます」(アディダス ジャパン 広報部)

相反するクッション性と反発力を兼ね備えた素材“BOOST フォーム”をミッドソールに100%を使用。微細で均一な独立気泡を閉じ込めたE-TPU(発泡熱可塑性ポリウレタンビーズ)で作られている。反発性が非常に高いため、まるで跳ねるように走ることができる
 
アディダス独自の編み込み技術を用いた“プライムニットアッパー”が足を包み込む。足の形状を問わず動きにあわせて抜群のフィット感を実現し、ストレスのないランニングを可能に。質感もカラーリングもスタイリッシュ
 
新開発の“ストレッチウェブアウトソール”を採用。クッション性が必要なところは粗く、反発力・安定性が必要なところは細かい網目状にすることで、BOOST フォームの形状変化と足の動きに適応してクッション性を最大化する。同時に、スムーズな重心移動と高い反発力・安定性も実現。素材はドイツのタイヤメーカー、コンチネンタ ル社と共同開発した“コンチネンタルラバー”。グリップ性と耐摩耗性に優れる

■安定感抜群のニューバランス「M990 GL4」

ニューバランス「M990 GL4」(2万7000円)。1982年に登場した長い歴史を持つ「M990」の最新バージョン。モデル名には(1000点満点中の)990点という意味が込められている。MADE IN USAも魅力

 多くのランナーの足元を支えてきたニューバランスのスニーカーは、ファッション性が高く、カジュアルシーンでの愛用者も多い。
 
「ランニングシューズブランドとして70年代から常に新しい技術を開発し、ランナーひとりひとりに合ったシューズを提案してきましたが、当時から機能だけでなくランナーのマインドに合ったカラーも調査して採用しています」(ニューバランス ジャパン 広報部)
 
その結果生まれた商品の一つが、1982年に誕生し、現在もオーセンティック・ランニング・スタイルとして人気を誇る「M990」。発売当初から優れたランニングスペックとデザイン性を両立し、ブランドを代表する名機へと成長。昨年は初代の復刻モデルも話題となったが、今回注目するのは2016年春夏にバージョン4にアップデートした現行モデル「M990 GL4」だ。
 
 卓越したクッション性と安定性を約束する、独自テクノロジーの“ENCAP”をミッドソールに搭載。偏平足などを治す矯正靴の製造会社として誕生したブランドだけに、その安定感は抜群だ。さすがはニュー“バランス”というだけある。
 
「特筆すべき点は高い衝撃吸収性と安定性。体重が重めのランナーが履いてもふらつくことなく安定感が高い。ゆっくりペースで走るときに、これほど最適なシューズはないですね」(南井氏)
 
ミッドソールにはニューバランスが誇るテクノロジー、“ENCAP”を搭載。後方のグレーの部分は硬く、前方の白い部分は軟らかい。この硬さの違いでクッション性と安定性を両立している
 
通気性を向上したメッシュとスエード素材で切り替えたアッパーは、機能だけでなくデザインとしても利いている。落ち着いたカラーリングで、ランニングウエアともカジュアルウエアとも相性が良い

 

アウトソールには、軽量でグリップ性の高いブローンラバーを使用

■人気上昇中のランニングシューズ On「クラウド」

注目度急上昇のOn「クラウド」(1万3824円)。ウォーキングからオリンピック金メダリストクラスのレースペースまで、あらゆるペースでの走りや用途に対応。この汎用性の高さ、軽さに加えて、街で履けるファッション性にも高い注目が集まる
 
 現在、ランナーの間で大きな話題となっているのが、On(オン)のランニングシューズだ。Onはスイス・チューリヒに本社を置くスポーツカンパニーで、世界的アスリートのオリヴィエ・ベルンハルド(元アイアンマンチャンピオン、On共同創業者)をリーダーとする、スポーツサイエンティストやランナーたちのチームによって、“ランニングを楽しくする”ことを目的として2010年に設立された。
 
今回紹介するモデル「クラウド」の最大の魅力は軽さにある。世界特許を取得した独自のアウトソール技術、“CloudTecシステム”を用いた世界最軽量級のクッショニングシューズは、ドイツで開催される世界最大のスポーツ用品展示会ISPOでゴールドアワードを獲得するなど、その革新性が高く評価されている。
 
このクラウドは、ブランド全体の半分以上の販売シェアを占める。オリンピック金メダリストクラス、アイアンマン・トライアスロンのチャンピオンクラスのアスリートたちが、レースで勝つために使用している本格ランニングシューズだ。
 
「CloudTecシステムにより、自然な着地感と力強い推進力を両立。着地時の衝撃を効率よく前方へのエネルギーへと変換してくれます。カジュアルな見た目からは想像できないくらい反発力が強く、軽いのが特徴です」(南井氏)
 
一方で、そのデザイン性の高さから、街履き用のスニーカーとしても支持されている。日本を含む世界各国の有名百貨店やセレクトショップなどで、クラウドをランニングシューズとは知らないユーザーからの購入が増加しているという。先日のアカデミー賞において、3年連続で撮影賞を受賞した『レヴェナント』のエマニュエル・ルベツキ氏が、タキシードに黒いクラウドを合わせたことも、ファッション業界で話題となった。
 
「レースで勝てるランニングシューズが、レッドカーペットでも使用される。これは、今までのスポーツプロダクトではあり得なかったこと。クラウドの高いファッション性が評価されていたということだと思います」(オン・ジャパン 駒田氏)

 

世界特許技術“CloudTecシステム”をアウトソールに採用

チューブ状のCloudTecが着地の衝撃で圧縮され、そして効率的な蹴り出しを実現する。チューブ状なので必要なときに必要な箇所にだけクッション性を生み出すことができる。また3D構造になっているため、垂直方向だけでなく水平方向の衝撃も吸収。ランニングの動きに則した合理的なクッショニングシステムだ

ゴム製のシューレースと一般的なシューレースの両方が同梱されている。「カジュアルシーンではゴム、ランニングシーンでは一般的なシューレースに付け替えて使っています」(南井氏)

■兼用ならカラーリングは落ち着いたものを

 以上、南井氏が太鼓判を押す、注目のランニングシューズ3足を紹介した。デザイン面で共通していたのは、落ち着いた色使い。タウンユースも念頭に置く場合は、スポーツ然としたビビッドカラーの派手なものではなく、基本的に単色でシンプルなランニングシューズを選ぶのが大前提だ。

 

 今回紹介したシューズはランニング性能も一級品。各メーカーが培ってきた技術を惜しみなく投入し、より早く、快適に走るために開発された本格ランニングシューズ。このスペックを持つシューズに、カジュアルシーンで使えるデザイン性が加われば、まさに鬼に金棒。趣味のランニングも、街へのお出かけも1足でカバーできる両得ランニングシューズがあれば、休日が充実することは間違いない。

(ライター 津田昌宏)

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